【異次元での現実】

A’の世界に迷い込んだという事実を把握しながらも、
姉は、この両親のいない世界でどうにか(弟と二人だけで)生きていこうと考えているようでした。
戻れないんだったら、じゃあどうしようと預金通帳をチェックしてる姿は、田中エリ子の
リアリストとしての側面をうかがわせます。
一方、弟の方はどうしても両親のいるもとの世界に戻りたい、と願っていて、
姉のそんな態度を冷淡で「やる気がない」と思っているようです。

異次元の世界がどうこうと言うより、何処にいても
「いつも、誰かがいないような気がする」

姉弟の思惑は微妙にすれ違い、ついには爆発してしまいます。

「ダイゴ、お前は生きてるよ。ここで生きてるよ。」

何処にいようと、誰といようと、ダイゴ自身がそこで厳として生きている、

という事実には変わりないとエリ子は考えていました。

戸別調査のお巡りさんが、エリ子の家を訪ねてきた時、現実は動き始めました。


【エビヅカの件】

富山から母方の叔母夫婦が上京してきて、子ども二人は別々に引き取る、
この家は売り払う。と言い出しました。

この富山の叔母夫婦は「現実」の象徴であり、14歳のエリ子にとって、
理不尽で、ワケのわからないことを言う「(無理解な)大人」の象徴でもあります。

エリ子は「ダイゴと一緒にいたいの!」と初めて本心を口にし、家を飛び出してしまいました。

しばらくして、ダイゴの部屋の窓のところに、エリコが梯子を登ってやってきます。

「ダイゴ、帰ろう。お母さんのいるところに帰ろう」

エリ子にはもう何の迷いもありません。
ダイゴと一緒に、元の(両親のいる)世界に戻ろうと、
そこならダイゴと一緒にいられると。

今まで、表には出さなかった弟への愛情がはっきりと芽生えた瞬間ですね。
エリ子が、ひとつ大人になった瞬間です。
このときのエリ子(多部ちゃん)の表情が実にイイ。
台詞で言わなくても、ああ、この子変わったんだなと思わせる生き生きとした表情ですね。
ファーストシーンの彼女の顔と比べてみてください。

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でも何で靴持ってるんでしょう?

もう一度の、そして最後の挑戦です。
そのためにはやらなくちゃいけないことがありました。
オリジナルの(いたずら書きされた)ワイシャツは捨てられてしまったので、
前回のトライアルの時には、エリ子がワイシャツの背中に同じような落書きをしましたね。
今度は失敗は出来ません。エリ子も本気です。

そのためには、本物の、エビヅカがイタズラ書きしたワイシャツが必要でした。

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エビヅカの実家に行って、食い下がるエリ子。
「知らねえよ。ちょっと遊んでただけだよ、なあ」ととぼけるエビズカ君。
(私は一瞬、もしかしてこの世界のエビズカ君はいじめとかしてないんでは?と思いましたが
いや、ここでもやらかしてるんですね。ダイゴのズボンのお尻にくっきり足跡がついてましたものね)

「お前に人の気持ちがわかるのかよ!」

出ました。エリ子のローキック。

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にも言ったように、多部ちゃんのキックはカッコよくて、哀しい・・・
哀しいほど効いてないっす(泣)「パンツ見えてんぞ」と余裕のエビヅカ。
でも、その蹴りの一撃が弟ダイゴに火をつけました


弟のために戦う姉を見て、ダイゴが吼えました。
エリ子だけでなく、ダイゴもまた成長していたんですね。
がむしゃらに突っ込んで、エビズカ君のお父さんを倒してしまいました。
泣き虫でいじられっ子だったダイゴも自分のために戦いを始めました。
自分を取り戻す為に、そして姉と一緒に元の世界にかえるために。
そして大乱闘(笑)
・・・・・
場面変わって、二人はバスの中。
会話はありません。かばんの中には、戦利品の「いたずら書きされたワイシャツ」。

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ちょっと映画『卒業』のラストシーンを彷彿とさせますが、
D・ホフマンが「やったぜ」から「やっちまった、どうなるんだろう」と微妙な面持ちになるのに対し、
多部ちゃんは「やっちまった」から、「ぜってい元の世界に帰るぜ」と決心の眼差し。
多部ちゃんの天性の「眼力」がものをいいますねえ・・・

落ち合う時間と場所を決めて、いったん別れるふたり。
この世界から脱出する前に、為すべきことが残されていました。

エリ子は、大久保ちゃんに「気持ちは変わらないから」と伝えに、バッティングセンターへ。
「前にも聞いたよ」と怪訝そうな大久保ちゃん。
でもA’にいたエリ子はちゃんとそう言って、彼女との関係修復を果たしたかもしれないけど、
Aのエリ子はまだ、大久保ちゃんと何となく疎遠なままでした。
相手に、きちんと気持ちを伝えるのは大事なことですね。
これもエリ子が成長したってことでしょうか。

ダイゴはクマノイさんに、小学校のときのことを謝りに。
こちらはなんか「え?」って感じでしたけど(笑)
とにかく、ダイゴも彼なりにけじめをつけました。


【帰るよ、ダイゴ】

公園で落ちあい、電話ボックスのところからやり直し。
家までの道のり(ルート)を辿って行くます。
駅前?を歩くふたり。
たこ焼き屋。
走り去る自転車の男。
転ぶ、カーボーイハットの男の子。
みんなあの時と同じ光景です。

「帰れるかもしれない」

ルート225=15
両親はいないのに、まだあったかいシチュー、つけっぱなしのテレビ
リビングの黄色い花→赤い花
突然の雨、それを知っていた母親
開かない傘
Aの世界とA’の世界をつなぐ唯一の手段=度数のあまりないテレフォンカード
ほとんど変わらない二つの世界=両親だけがいない
最後まで合わないブロックサイン
エリ子だけ打てないバッティングセンター
公園から家までのルートに点在する赤い色(屋台とか、軍手のオブジェとか)
ダイゴとマッチョ、富山のオジさんそして高橋由伸・・・みんな太めの体型。(おまけに中村監督)
公衆電話から、泣きながら母親に電話をするエリ子。ボックスを出て、空を見上げると一筋の飛行機雲。

なんかみんな暗喩的で不思議ですねえ・・・


古い映画だし、このブログを見てる人にとっては、ネタバレも何も
私以上にこの映画を愛し、鑑賞している人ばっかりですから、結末はご存知ですよね。
それでも一応、原作と映画に敬意を表して、ここら辺は割愛します(笑)

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「蹴り」と「泣き顔」、のちに多部ちゃんの代名詞になる大技が、この作品には登場。


【わかったよ、博士】

両親のいない世界で一緒に過ごしていた時期、
エリ子の提案でブロックサインを取り決めました。
「私が頭をかいたら、アンタは顎をかく。そうすれば何処に行ってもアンタだってわかる」
と二人だけのブロックサインでした。

ラストシーン。

空港のエレベータに乗り、頬っぺを掻くダイゴ。

いや、違う・・・また間違えてる、と思いつつ、ダイゴからの思いを受け止め

頭を掻くエリ子。

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いつまでもちぐはぐで不器用な者同士だけど、
この世界で唯一の姉弟


「わかったよ、博士」
“It's All Right. It's All Right,Brother. It's Aii Right ”

エリ子とダイゴは、全てを受け入れ、生きていくことを決意しました。

大人になるということは、友人や肉親とも,別の世界(いつも誰かがいない世界)に住むということなんですね。

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このジャージの着方。特殊なデザインかと思ってたんですが、そうじゃなくて
多部ちゃんの首が長いから、こうなったんですね(笑)
ホント、中村監督は多部ちゃんをよく知っていますね。
それで大好きだ(笑)・・・ワズラッテル・・・



【『南極料理人』対『ルート225』】


忘れてました(笑)
これ『大奥』放送記念企画:堺雅人vs多部未華子 の一環でしたね。
『南極料理人』も『ルート225』も、ある意味異次元の世界に放り込まれ、
そこでたくましく成長していくお話でした。
そして、西村君、エリ子両者とも気づかされるのは、家族の大切さです。

そんな贅沢な材料で、豪華な料理をつくろうと、
家族揃って、遊園地で食べる油ベトベトのハンバーガーの美味しさには敵わない、っていうこと。

どこにいても、家族の大切さ・家族への思いは変わらない、ということ。

どちらも静かにそう語りかけているような作品でした。

両作とも、何度も何度も観た、またこれからも観るであろう、
私の大好きな作品です。

勝敗なんて関係ないですね。

よって引き分け!両者譲らず・・・

堺雅人も多部未華子も私の大好きな役者さん、ということでした。

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アンコール