2013.07.15 怪物(2)
【『ハングマン』から『必殺仕掛人』へ】

例えば、一冊のノートでも、証拠の残らない毒薬でも、
針の穴をも通すような射撃の腕前の殺し屋でも、
「完全犯罪発生装置」は実は何でもいい・・・
ヒッチコックだったが、どこの家庭にもあるありふれた材料で
毒薬を作る、という作品があったような・・・

つまり、なんでもいいんですね。
たとえ殺人を犯しても捕まることのない「完全犯罪装置」を目の前にして
人はどうするのか?正義とは?復讐とは・・・というドラマが繰り広げられる訳です。
そのとき、「完全犯罪装置」は何でもいい。

映画で言うところの“マクガフィン”でしょうか?

今回の「完全犯罪発生装置」は亜臨界水とその生成装置(巨大な圧力釜的な?)。

ここに、初老の刑事と、若い女性と、ひとりの研究員が絡み、彼らが「怪物」となって
一歩間違えば「必殺仕掛け人」現代版のチーム誕生となりそうなストーリーでした。

刑事は、“殺人現場”の匂いを感じ取る特殊能力を持ち、
若い女性は復讐を果たした後、善悪の壁を乗り越えることの悦楽を憶え、
研究員は「完全犯罪装置」の使い手となった・・・

原作があるからしょうがない面があるでしょうけど、
絶対的なクロシロの判別が出来る刑事がむしろ率先してチームリーダーとなり、
格闘技と変装に長けた女性と、
新兵器をなんでも作っちゃう天才科学者3人で、
『ハングマン』っぽい勧善懲悪アクションドラマでも作ったほうが面白かった?
そんなことはないですね(笑)

実際、里紗を使って堂島昭の口を割らして、動画サイトに投稿してやる!という
香西刑事の策略は『ハングマン』ぽかったです。

じゃあ、怪物と化した3人は?というと
佐藤浩一はもっとエゲツない人物でもよかったような(まだいい子ぶりっこ?)
終盤、妄想で真崎(向井)ともつれあって河川に落ちたり(キングコング対ゴジラか?)
拳銃自殺しようとしたり、この期に及んで「お嬢ちゃん」過ぎ。
超能力ゆえに、組織から孤立してるんだったら、
もっと若い頃に「怪物化」してるんじゃないんでしょうか?
せっかく、佐藤浩一を起用しながら、なんか勿体無いと思いました。
苦悩するときとか、疲れ果ててるときの表情が、お父さんを彷彿とさせるようになったですね。


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多部未華子は、犯罪被害の暗い過去を持ち、ひっそりと暮らしていた女性が、
復讐を果たす過程で超えてはならない「悪の壁」を越える快感を覚え、
真崎(向井)とチーム?を組んでからは、以前よりも生き生きとなっている、
という難役にまたも挑んでいます。

でも、ちょっと出番不足。
何故、真崎(向井)と近しくなり(ありゃあ篭絡ってほどじゃないですよね?)、
堂島への復讐が自分の中で正当化され、「善悪の壁」を超えられ、
それがスリルと生きる喜びを感じられる行為となったのか?
それらがすべて、真崎(向井)の香西刑事への説明セリフで片つけられて
しまいました。ここ作品としてもキモだと思うのですが・・・

多部ちゃんなら、そのへんの心理もきちんと演じられると思いますが、いかんせん
2時間の単発ドラマではやむを得なかったですね。
佐藤篇、多部篇、向井篇 と3回に分けて欲しかったですね。

ときどき見せる等身大の(大人の)女性の自然な表情が良かったです。
不安だった「演劇っぽい大芝居」も最小限でした。
(ちょっとメイク、濃かったですかね。蝋人形のような場面もありましたが)

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向井理はまあがんばった大賞ですかね。
『ジェネラル・ルージュの凱旋』のときの堺雅人なんかどうでしょう?
あんな感じのちょっといけ好かないムード。

悪ぶってるんですが、にやりと笑うところなんかはまだ
「僕、今回は悪役なんですよ」って表情を作ってる感じでした。
「完全犯罪発生装置」を手にした男の、狂気と奢りと余裕かまし感がもうひとつ。
「きれいな顔立ちの男」というのは打ってつけなんでしょうね。

ま、女優で言えば、今まで「清純派」だったわけですから(笑)

藤原竜也みたいに異常な役もこれからバンバンやって将来を担う役者になってくださいね。


怪物と戦う者は、自らが怪物にならないように気をつけなければならない。

お前が長く深淵を覗くならば
深淵もまた等しくお前を見返すのだ。

って並んで吟じるのは何かのパロディでしょうか?
小説ならともかく、ドラマでこういうのは照れちゃいます(見てるほうが)
自分で自分を「怪物」といっちゃあダメだと思いますけど。

レクター博士はそんなセリフ言わないでしょ?
「スープにして、冷蔵庫に貯ってある」とか言いますけど・・・

10年くらい前に、『デビルマン』という映画がありました。
そこで、歴史に残る名セリフがあります。

主人公が敵の怪光線を浴びて、怪物(デーモン)に変身してしまうシーンで
「おらあ、デビルマンになっちまった」



コシヒカリとササニシキとゆめぴりかを一膳ずつよそってもらって、
そいつを片っ端から「おかずなし」で食べたような作品でした。


※栗山千明はもったいない(笑)
チームに加われば、強力な戦力になるのに・・・
前半のコメディリリーフっぽい役回りは不向き。
後半の(ちょっと仕事できる風な)感じは良かったです。
あと、おみ足も・・・。

いしのようこ親子はエピソードごとまるまる不要かと。
『大奥』でいえば、稲葉正勝の妻と娘(笑)
いしのようこの骨格は多部ちゃんに似ていると思う(私見)


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香西刑事と対峙する藤井寺里紗。
語尾で息が漏れるようなセリフ回しがきになりました。
表情は自然でいいです。


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香西が理沙のアパートを訪ねてくるシーン。
ちょっと若奥さん風?所帯じみてていいです。
一瞬、懐妊してるのかと思いましたw

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ピカレスク、いけますねえ

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やっぱり、この場面がストーリーの転換期になりましたね。
2回目に出てくる時には前と意味が変わってくる・・・


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逡巡するかのような理沙の表情。
その裏には、密かな「決意」が・・


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このシーンの多部ちゃんは、メイクのせいもあって
別人のように見えます。体つきは多部ちゃんですけど(笑)




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